日本競馬史に名を刻んだ名馬・ゴールドシップ。
その系譜をたどると、国が管理していた宮内庁下総御料牧場との関わりが明らかになり、更に詳しく調べると、皇室の血筋が浮かび上がってきます。
一体、どのような歴史がゴールドシップと結びついているのでしょうか。
この記事では、宮内庁下総御料牧場の歴史から見るゴールドシップとの関係や、彼が皇室の系統である理由を詳しく解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
宮内庁下総御料牧場は軍用馬の生産・育成牧場
宮内庁下総御料牧場とは、日本の宮内庁が管理し、皇室の馬を飼育・繁殖するための牧場で、江戸時代から軍隊の馬を育てるために使われていました。
1906年には馬政局が設置され、日本における本格的な馬産が始まります。
「馬政局」とは、馬に関する政策や管理を担当する政府の組織です。
現代は存在しない組織。
この動きに伴い、競走馬の品質向上や、多くの人々に競馬を楽しんでもらうための幅広い取り組みが行われ、馬産の需要がどんどん拡大。
しかし、風紀の乱れやサラブレッドが軍馬向きでないという理由から、官営牧場におけるサラブレッド生産は発展せず。
イギリスから牝馬を輸入
1923年に新競馬法が制定され、競馬の法整備が進み、1926年に宮内省下総御料牧場がイギリスから2頭の繁殖牝馬を輸入しました。
「新競馬法」は、競馬をより公平かつ規律正しいスポーツとして発展させ、合法的に運営するために導入された法律。
イギリスから輸入された2頭の牝馬は日本名で「種正」と「種道」と名付けられます。
【ここまでのまとめ】
- 宮内庁下総御料牧場は、江戸時代から皇室の馬を飼育・繁殖し、軍隊の馬を供給する場所だった。
- 1906年に馬政局が設置され、日本で馬を育てることが本格的に始まる。
- 馬産の発展に伴って競馬も盛んになるが、風紀の問題やサラブレッドは軍馬向きでないという理由で官営牧場でのサラブレッド生産は発展せず。
- 1923年に新競馬法が制定され、競馬の法整備が進む。
- 1926年、宮内省下総御料牧場がイギリスから2頭の繁殖牝馬(種正と種道)を輸入。
星の一族 – アメリカからの6頭の牝馬が革命をもたらす
1931年~1932年、アメリカから6頭の牝馬が輸入されます。
当時、日本競馬は主にイギリスからの輸入馬が主流だったため、アメリカ血統の馬を日本に持ち込むことは、革新的な出来事でした。
そのアメリカから輸入した6頭の牝馬は、アメリカの星条旗にちなんで日本名で「星旗」「星若」
「星濱」「星谷」「星富」「星友」と名付けられます。
名前に「星」が付けられたことから、「星の一族」と呼ばれていました。
これらの「星の一族」である6頭の牝馬は、輸入時にはすでに受胎しており、父はサーギャラハッド、マンノウォー、チャンスプレイなど、アメリカの一流種牡馬。
この6頭の牝馬の産駒のうち、クレオパトラトマス、エレギヤラトマス、ピアスアロートマス、シンヨリーナトマス、ナミトミの5頭は、合わせて計59回のレースで勝利を収め、その中の11回は特別レースも含まれています。
「星の一族」がそれぞれ優秀な産駒を輩出
さらに、競走馬として出走しなかった星友の産駒である月友は、後に種牡馬として多くの名馬を生み出し、1930年代から1950年代の日本の馬産に大きな影響を与えました。
その後、ゴールドシップの先祖にあたる星旗は日本ダービー優勝馬のクモハタを輩出。
また、星友は史上初の日本ダービー優勝牝馬ヒサトモを輩出し、星浜は第1回中山4歳牝馬特別(桜花賞)の勝ち馬ソールレデイを輩出。
星谷は帝室御賞典(天皇賞)の優勝馬で、名種牡馬となったトキノチカラなどを輩出し、多くの成功を収めました。
星旗がダービー馬を輩出したこともすごいですが、星友は牝馬で日本ダービーを制した産駒を輩出した点が特に素晴らしい。
これらの牝馬たちの血統は、日本の競走馬の産業でとても大切な役割を果たし、この8頭の馬は日本で生まれた競走馬たちの大切な祖先として認識されています。
【ここまでのまとめ】
- 1931年~1932年、アメリカから6頭の牝馬が輸入された。
- 主にイギリスからの輸入馬が多かったが、アメリカ血統の馬が導入されることになった。
- これらの牝馬は、星条旗にちなんで日本名で星旗、星若、星濱、星谷、星富、星友と名付けられ「星の一族」と呼ばれた。
- 6頭の牝馬は、輸入時に受胎しており、父はアメリカの一流種牡馬。
- これらの牝馬の産駒のうち5頭は、計59勝を挙げ、特別レース11勝を含む成績を収めた。
- 競走馬として出走しなかった星友の産駒である月友は、多くの名馬を輩出。
- 星旗、星友、星浜、星谷はそれぞれ優れた馬を輩出。
- ゴールドシップの祖先「星旗」はダービー馬を輩出。
- これらの牝馬の系統は、偉大な祖先として今も認識されている。
ゴールドシップは星の一族「星旗」の9代目の子孫
「星旗」の9代目の子孫であるゴールドシップは、星の一族の系譜を引きついでいます。
- 1924年産星旗
父 Gnome
- 1932年産月城(クレオパトラトマス)
父 Campfire
- 1945年産梅城(ハマカゼ)
父 ダイオライト
- 1959年産風玲(フウレイ)
父 ライジングフレーム
- 1972年産アイアンルビー
父 ラークスパー
- 1978年産トクノエイティー
父 トライバルチーフ
- 1987年産パストラリズム
父 プルラリズム
- 1998年産ポイントフラッグ
父 メジロマックイーン
- 2009年産ゴールドシップ
父 ステイゴールド
星旗はゴールドシップの母であるポイントフラッグの血統に当たりますが、母父がメジロマックイーンであるため、メジロの血もゴールドシップの系譜に組み込まれています。
最後に
ゴールドシップは、普通では考えられないほどの暴れ馬ですが、深く掘り下げるとさまざまな驚きが隠れています。
地元で有名なヤンキーが、実は皇室の出身であるように、まさに予想外の組み合わせ。
皇室の系統だったという事実は驚きです。
これらの意外性も相まって、ゴールドシップの魅力が一層際立っているのだと思います。